「AI在庫とファルマーケットの連携で廃棄金額を”0”に。」実現への道のりと思いを開発者に聞いてみました。
【プロフィール】梶村直人
東京大学大学院にてホテルの口コミデータや価格データの分析をし、新卒で三井物産に入社。EC事業やSCM最適化事業の立ち上げ、中国大手IT企業との新規事業立ち上げ(マーケティング・営業)を経験。自身でのプロダクト開発を目指し、2022年5月からカケハシに参画。現在はAI在庫のPharmarket連携や薬局本部様向けの機能開発を担当。
まず、『Musubi AI在庫管理』について教えてください。
「慢性患者の来局予定と新患の薬剤需要をAIが予測し、誰でも簡単かつ適切に在庫管理ができるサービス」です。特徴は2点あります。
1点目は、「おすすめ発注機能」です。未来の薬剤需要を予測し、AIが自動で適正在庫量を算出してくれるため、毎日のおすすめ発注リストから誰でも簡単に発注が可能です。
2点目は、「患者さんの来局管理機能」です。患者さん一人ひとりの来局履歴や来局予定を簡単に確認できるため、カレンダーなどでの属人的な管理が不要になります。
そして今回、ファルマーケットの売却機能を開発し、従来よりも、ファルマーケットへのご売却が簡単かつスムーズになりました。
Musubi AI在庫管理とPharmarketが連携することのメリットは何ですか?
大きなメリットとしては2つあり、まず1つ目は不動在庫の処理が簡単になることです。
ファルマーケットのような二次流通サービスのサイトを利用する場合、薬局様では処方が出ていない医薬品を探し、その医薬品をサイト上で検索して売却可能であるか、売却可能な場合はいくらなのかを確認します。そこから今後の処方可能性を考えて売却するかを判断するという非常に手間のかかる業務であり、不動在庫を売却したいが時間が取れていない薬局様が多くいらっしゃいました。
今回の機能連携により、Musubi AI在庫管理(以下、AI在庫)を利用すると、不動在庫の抽出、処方実績と概算売却金額の確認、申込、そして出庫処理まで、すべてAI在庫の画面上で完結できるようになります。
また2つめの利点として、AI在庫を導入している薬局様限定で、「買取率(対薬価比)がUP、お薬送付時の送料無料(※)」といったお得な特典が利用できます。※通常、送料はお客様にご負担いただいております。
普段の業務の中で不動在庫の処理が”簡単に”実施できるようになり、さらに”お得に”利用できる、薬局様にとって大きな業務改善になるのではないかと考えています。
売却機能の開発をしようと思ったきっかけはありましたか?
AI在庫をリリースしてから、導入いただいた薬局様にお話をお伺いしたところ「不動在庫」に関するお悩みが多かったです。
例えば、「在庫の適正管理はできるようになったけど、余った不動在庫をどう処理すればいいか分からない」や、「融通先がなく、売却も面倒で結局廃棄してしまう」というお声がありました。AI在庫に売却機能を追加することで、普段の在庫管理業務の1つとして、”簡単かつ確実に売却する”ことが実現でき、"薬局様の課題を解消できる"と思い、開発を進めました。
実際に売却機能の画面を薬局様にお見せした反応はいかがでしたか?
機能を開発中、既にAI在庫とファルマーケットを利用している薬局様に実際の画面をお見せしたところ、とても好印象でした。
既存のファルマーケットのサイトで見積り金額を確認する際、医薬品名を検索し、製造番号や使用期限などの情報を入力する手間がかかります。AI在庫の画面では、何も入力しなくても売却可否と概算金額が分かるようになりました。
また売却した薬は、AI在庫上で自動で在庫が減算される仕組みとなっています。これまでは薬局様が手動で在庫数を調整する手間がありましたが、この対応が不要になり、AI在庫上だけでスムーズに売却が完結する点にもお褒めの言葉をいただきました。
開発の苦労話を教えてください。
大きく3つあります。
1つ目は売却情報のデータ管理です。
ファルマーケットで検品した結果、使用期限や製造番号などが売却申込み時の内容と異なる場合があります。開発上、検品前後のデータを別管理することがかなり大変で・・・。でも、どこがどう違ったのか薬局様が把握できないと、ご不便かと思い、検品前の内容も画面上で確認できるようにしました。
2つ目はAI在庫とファルマーケットのサービスの融合です。
AI在庫とファルマーケットは、それぞれ別のサービスとして生まれたため、2つのサービスを融合させることに苦労しました。そのために、まずは私自身が現在のファルマーケットについてしっかり理解し、良いところは残しつつ、どうすればより薬局様が使いやすいサービスになるかを模索しながら開発を進めました。
3つ目は個人的なことになりますが、今回の開発にあたり、新しいチームを作ったことです。
採用から開発の進め方、チームのマネジメントなど、私自身今回が初めての経験でした。チームで効率の良い進め方を模索しながら、無事リリースすることができてとても安心しています。
今回の開発にどんな情熱を注いで進めましたか?
一定規模の店舗数があるチェーン薬局様だと、店舗間融通で不動在庫の処理ができますが、融通先が見つかりにくい中小薬局様だと、廃棄金額が大きくなってしまいます。
AI在庫としては、不動在庫が発生しない、在庫金額も膨らまない、”適正な在庫を維持できる”発注を目指しています。ただ、どうしても患者さんの体調などによって処方が変わってしまうことがあるため、完璧に予測することはできません。そのため、不動在庫を”0”にすることは、発注の最適化だけでは難しいです。
そのため、AIによって発注をコントロールし、無駄な在庫を発生させないというAI在庫の特性と、それでも不動になってしまった在庫を売却できるファルマーケットの特性を組み合わせて、廃棄金額” 0 ”を実現できるのではと思い、開発に努めました。
今の薬局業界は、対物業務への調剤報酬が減少し、対人業務が重視されています。そのなかで経営を成り立たせるには、対物業務を減らしながらも、適正在庫を保たなければいけません。
ただ、薬の管理に時間をかけてしまうと、患者さんへの対応が疎かになってしまいますし、逆に時間をかけないと廃棄が膨らんでしまいます。
AI在庫は、「対物業務に時間をかけず、不動在庫を” 0 ”にする」という両面を実現することを目指しています。
最後に、カケハシとファルマーケットの目指すべき姿を聞かせください。
カケハシは「日本の医療体験を、しなやかに。」というミッションを掲げています。医薬品流通は特殊な業界で、薬機法等の規制や、安定供給の課題が多いです。AI在庫では卸様から薬局様への納品頻度や数量を最適化していくことを目指していますが、それだけでは業界の流通全体をしなやかにすることは難しいです。
そこで、Pharmarketの二次流通の強みを活かして、医薬品流通の課題や廃棄問題を幅広く解決していくことで、よりしなやかな医療体験を実現していきたいと思っています。
Musubi AI在庫管理のサービスにご興味いただけた場合は、コチラから詳細をご覧ください。
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